馬のケガはなぜ致命傷となるのか
競馬の競走馬は骨折などの怪我を理由に、その後安楽死するケースがあります。
人間であれば、骨折程度であれば、その後競技に復帰している方が多数いますし、第一線を退いたとしても最低限の生活はできます。
なぜ、競馬による事故や怪我は、骨折程度で致命傷になってしまうのでしょうか?
予後不良と判断されれば安楽死になるケースが多い
骨折など怪我を理由に、その後安楽死になる馬は予後不良と判断されている事がほとんどです。
競走馬の多くを占めるサラブレッドの足首(人間でいうとクルブシ)の部分は骨折やヒビが入りやすく、ガラスの脚とも呼ばれています。
競走馬の一般的な馬体重は400kg~500kg前後です。
通常時でも、ただ立っているだけで1本の脚で100kg以上を支えている事になります。
骨折などの怪我で、1本の脚を使えなくなると、残りの3本の脚で全体重を支えないといけません。
そうすると、他の怪我をしていない脚に過大な負荷が常時かかる事になり、健全肢にも負重性蹄葉炎(ていよう えん)や蹄叉腐爛(ていしゃふらん、ていさ ふらん)といった他の病気を発症する場合があります。
こうした症状が悪化すると、最終的には衰弱死に追いやられるか、痛みによるショック死になってしまい、症状が一定以上悪化すると、その後の回復がほとんど見込めなくなってしまいます。
そのため、治療が難しいと判断された段階で痛みに苦しみながら死ぬ前に安楽死という方法を取る事が多いです。
つまり、実際は骨折で死んでいるのではなく、骨折が他の病気を引き起こす事で致命傷に追いやられています。
人間であれば、脚を骨折してもベッドで寝たきりの生活をしたり、車椅子に乗る事ができますが、馬の場合はそうはいかず、自力で立つ事ができなければ、それは命に関わる問題になってしまうのです。
対策やリハビリ方法で、胴体を吊り上げたり、プールによるリハビリ方法もありますが、治療費のコストが高く、結果的に死亡に至る比率が高いため、ほとんどの馬は予後不良と診断されてすぐに安楽死の処置をとられています。
骨折でもレースに復帰している馬はいる
競馬は馬の骨折=致命傷とは限りません。
骨折の程度やその後の治療課程によっては、完治してレースに復帰している馬もいます。
骨折の程度がヒビ程度や部位によっては、走る事ができなくなっても、多少は自分の体重を支えるくらいできれば、ほかの病気に発展するリスクも少なく、時間をかけて回復に向かっていきます。